東京・サステナブル・ファイナンス・フォーラム2021東京都主催

 東京都では、持続可能な都市づくりに貢献するESG投資やサステナブルファイ ナンスの普及、及び同分野における東京都のプレゼンスの向上等を目指し、2021年10月14日より23日まで「Tokyo Sustainable Finance Week(東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク)」を実施いたしました。
 本ウィーク期間中に、国内外の公的機関、金融機関、金融業界団体の関係者等を対象とした「Tokyo Sustainable Finance Forum(東京・サステナブル・ファイナンス・フォーラム)」を開催し、昨今急速に拡大しているサステナブルファイナンスについて、最新のグローバルな動向や課題等、サステナブルファイナンスの 幅広い可能性について議論いたしました。

開催概要

  • 日 時2021年10月15日(金)14:15~18:00
  • 主 催東京都 政策企画局
  • 対 象公的機関、金融機関、金融業界団体の関係者等(どなたでもご参加いただけます)
  • 開催形式オンラインによる配信
  • 定員数制限はありません
  • 参加費無料

東京・サステナブル・ファイナンス・フォーラム プログラム

時間 項目 登壇者
14:15~14:20
(5分)
主催者挨拶(ビデオ配信)

オリジナル版(日本語)主催者挨拶 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

同時通訳版(英語)主催者挨拶| 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
小池 百合子
東京都知事
14:20~14:35
(15分)
基調講演(ビデオ配信)

「持続可能な開発目標(=SDGs)達成のための
ファイナンスの役割と可能性について」


オリジナル版(日本語)基調講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(英語)基調講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
水野 弘道
革新的ファイナンス及び持続可能な投資に関する国連事務総長特使
14:35~14:45
(10分)
講演(ビデオ配信)

「ネットゼロエコノミーにおける情報開示の重要な役割」


オリジナル版(英語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(日本語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
メアリー・シャピロ
TCFDタスクフォース事務局
ブルームバーグ 公共政策担当副会長・特別顧問
14:45~15:00
(15分)
講演(ビデオ配信)

「サステナブルファイナンスに関するJPXの取組み」


オリジナル版(日本語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(英語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
清田 瞭氏講演資料PDF| 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
清田 瞭
株式会社日本取引所グループ
取締役兼代表執行役グループCEO
15:00~15:20
(20分)
講演

「GPIFのESG投資」


オリジナル版(日本語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(英語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
宮園 雅敬氏講演資料PDF | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
宮園 雅敬
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長
15:20~15:35
(15分)
講演(ビデオ配信)

「ある大型機関投資家による
サステナブル・ファイナンスへの取組」


オリジナル版(英語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(日本語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク カリーヌ・スミス・イエナチョ氏講演資料PDF| 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
カリーヌ・スミス・イエナチョ
ノルウェー中央銀行インベストメントマネジメント
ガバナンス・コンプライアンス担当役員
15:35~15:50
(15分)
講演

「サステナブル資産運用の最前線から」


オリジナル版(英語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(日本語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
マルコ・モレリ
アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社
エグゼクティブ・チェアマン
15:50~16:05
(15分)
講演(ビデオ配信)

「気候変動に関する日本銀行の取り組み」


オリジナル版(日本語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
中村 康治
日本銀行 国際局兼企画局審議役、気候連携ハブ総括
16:05~16:25
(20分)
講演

「世界が注目する日本のサステナブル経営への変革
~投資家と企業のエンゲージメントの現状~」


オリジナル版(日本語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(英語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
小野塚 惠美
マネックスグループ
カタリスト投資顧問株式会社 取締役副社長COO
16:25~16:40
(15分)
講演

「サステナブルファイナンスに関する東京都の取組」


オリジナル版(日本語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(英語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
児玉 英一郎氏講演資料PDF| 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
児玉 英一郎
東京都 政策企画局 国際金融都市戦略担当局長
16:50~18:00
(70分)
パネルディスカッション

「サステナブルファイナンスの推進に向けて」


オリジナル版(日本語)パネルディスカッション | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
同時通訳版(英語)講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
山岡 浩巳氏講演資料PDF | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
猿田 隆氏講演資料PDF | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
富田 秀夫氏講演資料PDF | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
モデレーター
山岡 浩巳
フューチャー株式会社取締役/東京都国際金融フェロー


パネリスト
猿田 隆
三井住友DSアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長兼CEO

富田 秀夫
リフィニティブ・ジャパン株式会社 代表取締役社長

吉高 まり
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 企画管理部門
副部長 プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト

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講演(ご登壇順)

  • 水野 博道 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    水野 弘道

    革新的ファイナンス及び持続可能な投資に関する国連事務総長特使

    1988年より住友信託銀行にて日本国内、シリコンバレー、ニューヨーク等で投融資業務に従事。 2003年ロンドンのプライベート ・ エクイティー ・ ファンドであるコラーキャピタルのパートナーに就任。2015年年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) の理事兼CIO(最高投資責任者)に就任、2020年3月退任。

  • メアリー・シャピロ| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    メアリー・シャピロ

    TCFDタスクフォース事務局 ブルームバーグ 公共政策担当副会長・特別顧問

    第29代米国証券取引委員会(SEC)委員長として、数十年にわたる規制面でのリーダーシップを発揮。女性として初めてSEC委員長を務め、また、SECと商品先物取引委員会の両方の委員長を務めた唯一の人物である。4年間にわたり、SEC史上最も多忙な規則制定を指揮し、その間、投資家の保護を向上させるための包括的な再構築プログラムを実行した。退任にともない、オバマ大統領はシャピロ氏のリーダーシップについて「SECはより強固になり、金融システムはより安全で、米国民に貢献できるようになった。これはシャピロ氏の尽力のおかげである」と称賛した。

  • 清田 瞭| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    清田 瞭

    株式会社日本取引所グループ 取締役兼代表執行役グループCEO

    1969年早稲田大学政経学部経済学科卒業、74年6月ワシントン大学経営学修士(MBA)取得。69年大和証券㈱(現㈱大和証券グループ本社)入社後、取締役東部本部長、取締役債券・資金本部長、常務取締役債券・資金本部長などを歴任し、97年代表取締役副社長就任。99年4月大和証券エスビーキャピタル・マーケッツ㈱(現大和証券㈱)代表取締役社長。2004年㈱大和証券グループ本社取締役副会長兼執行役兼㈱大和総研理事⾧、08年㈱大和証券グループ本社取締役会長兼執行役、11年同社名誉会長。2013年㈱東京証券取引所代表取締役社長、15月より現職。

  • 宮園 雅敬| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    宮園 雅敬

    年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長

    1976年東京大学法学部卒業、同年4月農林中央金庫入庫。熊本支店長、秘書役、人事部長、総合企画部長、常務理事、専務理事代表理事副理事長兼経営管理委員などを歴任。2019年4月には企業年金連合会理事長に就任し、その後20年4月から現職。

  • カリーヌ・スミス・イエナチョ| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    カリーヌ・スミス・イエナチョ

    ノルウェー中央銀行インベストメントマネジメント ガバナンス・コンプライアンス担当役員

    2020年10月6日最高ガバナンス・コンプライアンス責任者に就任。2017年8月オーナーシップ戦略グローバル責任者としてノルジェス・バンク・インベストメント・マネジメントに入社、2018年1月1日最高コーポレートガバナンス責任者に昇進。ノルジェス・バンク・インベストメント・マネジメント入社前はスタトイル社にて副社長(法務担当)兼最高コンプライアンス責任者を務める。法律事務所のみならず、金融業界・石油ガス業界で弁護士として20年以上活躍し、幅広い経験を持つ。オスロ大学法学部卒業、ハーバード大学ロースクール修士課程(法学)修了、ノルウェー経済大学(NHH)修士課程(経済学)修了。

  • マルコ・モレリ| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    マルコ・モレリ

    アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社 エグゼクティブ・チェアマン

    2020年9月14日付より現職。入社以前は、16年から20年まで、Banca Monte dei Paschi di Siena SpAの最高経営責任者兼ゼネラルマネージャー。12年から16年までは、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの欧州、中東、アフリカ地域の副会長および、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ・イタリアのCEO。10年から12年までは、Intesa Sanpaolo Groupのゼネラルマネージャー兼副CEOを歴任。それ以前は、JPモルガン・イタリアの最高経営責任者兼ゼネラルマネージャー、JPモルガン・ヨーロッパの執行委員会メンバーを経て、Montepaschi Group内で数々の上級管理職を務めた。また、キャリアを通じて、イタリア銀行協会の取締役および執行委員会メンバー等を務めている。ルイス大学(ローマ)経済学およびビジネス研究の学位取得。公認会計士および監査人。

  • 中村 康治| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    中村 康治

    日本銀行 国際局兼企画局審議役、気候連携ハブ総括

    2021年より現職。G7、G20などの国際関係事務を統括するとともに、日本銀行内部における各種の気候関連業務の連携・調整を行う「気候連携ハブ」も統括。1992年日本銀行入行。企画局、金融機構局、調査統計局等で調査等を担当。国際通貨基金エコノミスト、金融安定理事会下部部会メンバー、松本支店長、米州統括役を歴任。92年東京大学経済学部卒業。ボストン大学経済学修士・経営学修士。金融経済に関する論文を多数執筆。

  • 小野塚 惠美| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    小野塚 惠美

    マネックスグループ カタリスト投資顧問株式会社 取締役副社長COO

    1998年JPモルガン銀行入行。マーケットリスク管理業務に従事。2000年よりゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社において多岐にわたる資産運用業務に従事。16年からは日本におけるスチュワードシップ責任推進の統括としてESG(環境・社会・ガバナンス)リサーチ、企業との対話を年間200社以上実施。20年4月カタリスト投資顧問株式会社入社020年5月より現職。21年7月マネックスグループ(東証一部)にてESG/サステナビリティ推進タスクフォースリーダーに就任。

パネルディスカッション

  • 山岡 浩巳| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    モデレーター


    山岡 浩巳

    フューチャー株式会社取締役 東京都国際金融フェロー

    日本銀行において、パリ事務所勤務、景気分析グループ長、参事役・大手銀行担当総括など政策分野に広く携わる。この間、バーゼル銀行監督委員会委員、国際決済銀行(BIS)市場委員会委員、同決済・市場インフラ委員会委員など国際機関の要職を歴任。経済・法律分野での著書・論文多数。米国ニューヨーク州弁護士。「『国際金融都市・東京』構想に関する有識者懇談会」メンバー「Tokyo Green Finance Market(仮称)」の実現に向けた検討委員会委員長。

  • 猿田 隆| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    パネリスト

    猿田 隆

    三井住友DSアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長兼CEO

    三井住友DSアセットマネジメント代表取締役社長兼CEO。1984年慶應義塾大学商学部卒業。同年住友信託銀行入社、2004年野村アセットマネジメント入社、13年常務執行役員運用調査本部長、トレーディング本部長、14年執行役専務、18年野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー取締役会長、19年野村アセットマネジメント顧問、同年三井住友DSアセットマネジメント副社長執行役員を経て、20年より現職。

  • 富田 秀夫| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    パネリスト

    富田 秀夫

    リフィニティブ・ジャパン株式会社 代表取締役社長

    1982年3月慶應義塾大学法学部卒。(株)共同通信社に入社後、国際金融情報分野を中心に担当。その後、金融情報/システム企業の役員を歴任し、2012 年7 月トムソン・ロイター・ジャパン株式会社代表取締役社⾧に就任。19年3月より同社の社名変更に伴い現職。21年2月より、リフィニティブはロンドン証券取引所グループ傘下の事業となる。日本金融学会、経済同友会会員。一般社団法人日本投資顧問業協会理事、一般社団法人東京国際金融機構理事。

  • 吉高 まり| 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    パネリスト

    吉高 まり

    三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 企画管理部門
    副部長 プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト

    IT会社、米国投資銀行等に勤務。ミシガン大学環境・サステナビリティ大学院(現)科学修士。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科講師博士(学術)。国内外で環境金融コンサルティング業務に長年従事した経験を活かし、現在はESG投資、SDGsビジネス、気候変動、サステナブルファイナンス領域で多様なセクターに対しアドバイス等を提供。三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券兼務。慶應義塾大学大学院非常勤講師。環境省、経済産業省、内閣官房、農林水産省等の複数の審議会等の委員に就任。

東京・サステナブル・ファイナンス・フォーラム開催報告

主催者挨拶 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

東京都知事 小池 百合子

  • 小池都知事は、世界は現在、新型コロナウイルスと気候変動という2つの危機に直面していると指摘。そうした中、東京都ではコロナ禍を乗り越え、その先に持続可能な成長を実現する「サステナブル・リカバリー」の視点で政策を推進しているとしたうえで、サステナブル・リカバリーを確かなものとし、深刻化する気候危機に立ち向かう鍵を握るのは金融であると言及しました。
  • イギリスのEU離脱や香港における国家安全維持法制定など、国際金融を取り巻く目まぐるしい変化も踏まえ、東京都は2021年7月に「国際金融都市・東京」構想の改訂案を発表したと述べ、そのポイントの1つとしてグリーンファイナンスの活性化に注力するため、「Tokyo Green Finance Initiative(TGFI)」を推進し、幅広い関係者と連携しながら具体的な行動を推し進めていく決意を表明しました。

基調講演 持続可能な開発目標(=SDGs)達成のためのファイナンスの役割と可能性について 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

革新的ファイナンス及び持続可能な投資に関する国連事務総長特使 水野 弘道 氏

  • 水野氏は、気候サミットやG7、G20など国際的なリーダーたちが集まる会議において、サステナブルファイナンスは最重要課題となっていると述べ、その中で民間金融の力を活用してトランジションを加速させようという議論が活発になっていると解説。それぞれの国が、各国の市場のサステナブルファイナンスやグリーンファイナンスの投資状況を注視していると述べました。
  • 日本においてもサステナブルファイナンスやグリーンファイナンスの環境は改善しつつあると分析する一方、2020年の世界のグリーンボンドの発行額は120兆円超、サステナブルファイナンスボンドなどを含めると150兆円を超えるとされるのに対し、日本はようやく1兆円を超えた状態であり、東京の市場を世界のグリーンファイナンス、サステナブルファイナンスの中心にするという目標の実現に向けてはさらなる成長が必要であると示唆しました。
  • この「東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク」を機に、民間の側から政府や東京都、市場に必要な環境整備を求めると同時に、政府や東京都などはそれに先んじてルール設定をしていくことが重要であると指摘。日本そして東京がトランジションを加速し、そこで得た資金を基にさらに世界にサステナブルなビジネスを展開するという、正の循環が生まれることを期待していると語りました。

講演① ネットゼロエコノミーにおける情報開示の重要な役割 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

TCFDタスクフォース事務局 ブルームバーグ 公共政策担当副会長・特別顧問 メアリー・シャピロ 氏

  • 企業の気候関連財務情報開示を目指し2016年に設立されたTCFDは、翌年にガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標という4つのテーマに重点を置いた提言を発表し、この提言は88ヵ国・2,500社以上の組織と、1,000社を超える金融機関が支持していると説明。その中でも日本は、日本のTCFDコンソーシアムの取組により、TCFDを支援する400を超える組織とともに世界をリードしていると語りました。
  • TCFDでは毎年「ステータスレポート」を公表しているが、昨日発表した「第4回TCFDステータスレポート」では、TCFDの提言に沿った開示は9ポイント増で、2018年から2019年の成長率の2倍を上回るとともに、2020年の1年間で1,000を超える新しい組織がTCFD支持者となり、前年比98%増という結果になったと報告。この成長は重要な政策発表やTCFDに準拠した報告を必須とする社会の流れなどに支えられたものであり、企業による開示は任意から義務化へとパラダイムシフトが起こっている兆しであると分析しました。
  • さらに、TCFDは企業がより一貫性のある指標や低炭素経済への移行計画などを開示するのに役立つ新たなガイダンスを発表したことを紹介。TCFDに準拠した開示は、ネットゼロの目標を達成するために不可欠なイノベーションを引き起こし、加速させるのに役立つと締めくくりました。

講演② サステナブルファイナンスに関するJPXの取組み 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

株式会社日本取引所グループ取締役兼代表執行役グループCEO 清田 瞭 氏

  • 清田氏はまず日本取引所グループ(以下、JPX)が2021年6月に実施したコーポレートガバナンス・コードの改訂におけるポイントについて解説。大きなポイントとして、①取締役会の機能発揮、②中核人材における多様性の確保、③プライム市場においてはTCFDまたは同等の国際的枠組みに基づき気候変動による情報開示を質量ともに充実することの3点をあげました。
  • 次に、JPXの取引所運営会社としてのサステナビリティ推進に関する取組みについて紹介。2つの大きな柱があるとしたうえで、1つは上場会社のESG関連の取組支援であり、もう1つは投資家へのESG関連商品の提供であると述べ、それぞれに関してJPXが実施している具体的な施策について説明を行いました。
  • 最後に、上場会社としてのJPXのESG課題への施策について取り上げ、気候変動への対応としては2024年度までにグループ全体でのカーボンニュートラル達成を目指すことを2021年7月に公表し、同年10月から東証ビル・大証ビルの電力契約を再生可能エネルギーに切り替えたほか、2022年度にはJPX自らが再生可能エネルギー発電設備を保有し、再生可能エネルギーを創出することで、環境課題の解決に向けてより積極的に対応していく予定であると述べました。

講演③ GPIFのESG投資 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長 宮園 雅敬 氏

  • 年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)は、世界市場をポートフォリオに取り込んだユニバーサルオーナーであると同時に、100年という時間軸で設計された公的年金財政の下で長期的な観点から年金積立金を運用する超長期投資家という特性があると説明。その特性ゆえにESGに関わるリスクがポートフォリオに負の影響を及ぼす可能性があることが、GPIFがESG投資に積極的に取り組む背景であると述べました。
  • GPIFのESG投資の中心はESG指数に基づくパッシブ運用であり、2017年の投資開始以来、国内株式で4つ、外国株式で3つの指数を選定して投資を行っており、投資残高は2021年3月末時点で合計10.6兆円に上ると言及。2018年からは気候変動に関連して2つのカーボン・エフィシェント指数への投資を開始し、投資残高は合計4.4兆円になっていると語りました。
  • GPIFのESGに関する取組については、毎年「ESG活動報告」を作成し、中でも気候変動についてはTCFDの提言に沿った詳細な気候関連財務諸表を開示していると紹介。TCFDに注力する意義については、アセットオーナーとして積極的に情報開示することがインベストメントチェーン全体の持続可能性に寄与し、ひいてはGPIFの長期的な収益の確保につながると述べました。

講演④ ある大型機関投資家によるサステナブル・ファイナンスへの取組 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

ノルウェー中央銀行インベストメントマネジメント
ガバナンス・コンプライアンス担当役員
カリーヌ・スミス・イエナチョ 氏

  • 同社は約1.3兆ドルの資産価値を有するグローバルファンドであり、71ヵ国・9,000社を超える企業において小規模な株式を保有し、平均すると世界の上場企業の1.5%の株式を保有しているとしたうえで、同社にとって日本は第2の市場で約750億ドルの投資を行っていると紹介。投資を行っている9,000社すべてに対し、人権や子どもの権利、気候リスク、生物多様性など、持続可能性に関するリスクと機会について明確な期待を持っていると語りました。
  • 同社はよい株主・支える株主であることを目指し、原則に基づいた透明性のある株主行動を行うべく、主に対話と投票を通して投資先企業に積極的に関与していると説明。2020年には12万件を超える決議に投票し、約3,000件の株主総会に参加するとともに、企業の事業内容が同社の期待に沿っているかどうかも毎年評価していることを明らかにしました。
  • ここ数年、多くの企業が気候変動問題への取組について力強い報告を行っているが、それ以外の社会問題についての情報開示量はまだまだ不足していると指摘。そのうえで、最終的には報告書の作成は企業にとって大きな課題ではなく、大切なのは適切な持続可能性戦略を持ち、それをリスク管理とガバナンスの手順に組み込み、検証してフォローアップすることであると述べました。

講演⑤ サステナブル資産運用の最前線から 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

アクサ・インベストメント・マネージャーズ
エグゼクティブ・チェアマン
マルコ・モレリ 氏

  • 同社は1兆ドルの資産を運用しており、日本市場では20年以上の投資実績があると説明。持続可能性とは企業の日常的なビジネスや運営の過程に組み込まれるべき概念であり、何よりも純粋な金融リターン以上のものを期待している社会や投資家に対し、社会における企業の役割を説明する方法であると指摘。ESG関連商品への投資が増加しているのは、投資家がESGをすでに必須であると考えているからだと述べました。
  • ESGにはまだ共通の基準がなく、世界中の国や地域でバラバラの方法で運用されているため、その統一を図る必要があると言及。そのうえで、現在は移行期にあり、多くの資産運用会社はESGの観点からどの投資先がベストプレーヤーとなるのか、今後の展開においてベンチマークとなるような環境を整備している企業はどこなのかを注視していかなくてはならないと語りました。
  • その一方、ESGは資産運用業界にとって社会的進歩の最前線に立つまたとない機会であるとし、そのために今後はESGに関するあらゆることを測定・実証・監視するための指標についてより迅速かつ詳細に検討していかなくてはならないと指摘。そして、大切なのは持続可能性とESGという共有するメッセージを、資産運用会社が企業自身また投資商品において目に見えるものにしていくことだと述べました。

講演⑥ 気候変動に関する日本銀行の取り組み 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

日本銀行 国際局兼企画局審議役、気候連携ハブ総括 中村 康治 氏

  • 日本銀行は2021年7月に気候変動に関する包括的な取組方針を公表したと述べ、策定にあたっては中央銀行の責務である物価と金融システムの安定を念頭においたと言及。そして、この包括的な取組は、具体的には「金融政策」「金融システム」「調査研究」「国際金融」「業務運営・情報発信」という5分野に分かれていると述べました。
  • 1つ目の「金融政策」においては金融機関が自らの判断に基づいて取り組む気候変動対応の投融資をバックファイナンスする新たな資金供給オペレーションを導入するとし、2つ目の「金融システム」では気候関連金融リスクの把握・管理に関する金融機関の取組を後押ししていくと説明。3つ目の「調査研究」については、気候変動問題がマクロ経済や金融市場、金融システムにもたらす影響の分析を深めるとともに、情勢判断やリスク把握のためのデータ収集や分析手法の高度化を図るとしました。
  • 4つ目の「国際金融」に関しては、多国間協議への参画等を通じて気候変動への取組に貢献していくと表明し、5つ目の「業務運営・情報発信」では、日本銀行自らが気候変動への対応を推進するとともに、TCFDの推奨内容を踏まえた開示を行うなど対外説明を充実させると語りました。

講演⑦ 世界が注目する日本のサステナブル経営への変革~投資家と企業のエンゲージメントの現状~ 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

マネックスグループ カタリスト投資顧問株式会社 取締役副社長COO 小野塚 惠美 氏

  • 小野塚氏はまずエンゲージメント投資とはサステナブルファイナンスの中のサステナブル投資の1つであると説明。日本では上場企業の多くがPBR1倍割れの状況にあり、ビジネスモデルやビジネスポートフォリオの変革が望まれる企業も多いと指摘したうえで、投資先企業に行動の変化を促す対話を行うとともに、議決権行使や株主提案などの手法を用いながらサステナブル経営を後押しするのがエンゲージメント投資であると解説しました。
  • アベノミクスの下で始まったコーポレートガバナンス改革により、企業の経営者は株主との対話により前向きになっていると分析。そうした状況は経営陣との対話を重視し、企業の変革のカタリストとなるエンゲージメント投資には好機であり、現在、日本におけるエンゲージメント投資とサステナブル経営への変革に世界の注目が集まっていると述べました。
  • エンゲージメント投資の成果については、2020年6月25日に1万円で設定した「マネックス・アクティビスト・ファンド」が2021年10月7日時点で1万3,090円となり、30%以上の成果を上げることができていると報告。今後も日本の豊かな未来と顧客の資産形成の両立による、個人と社会のサステナビリティの実現を目指して活動していくと語りました。

講演⑧ サステナブルファイナンスに関する東京都の取組 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

東京都 政策企画局 国際金融都市戦略担当局長 児玉 英一郎

  • 東京都は、2050年までに世界のCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を目指しており、そのため2021年1月には2030年までに温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減するカーボンハーフを目指すと表明したことを紹介。エネルギー消費量を2000年比で50%削減、再生可能エネルギーの電力利用割合を50%程度に高めることを目指し、「ゼロエミッション東京戦略」の行動を加速していくと語りました。
  • 2021年6月、東京都はグリーンファイナンス発展に向けた戦略的な取組である「Tokyo Green Finance Initiative(TGFI)」をとりまとめたと述べ、TGFIにおける施策の方向性として「グリーンファイナンス市場の発展」「グリーンファイナンスにおける参加プレーヤーの裾野拡大」「環境施策・環境技術の情報発信とESG人材の育成」の3つをあげました。
  • 2017年に策定した「国際金融都市・東京」構想を2021年秋に改訂する予定であり、そこでは「サステナブル・リカバリーを実現し、世界をリードする国際金融都市へ」を大きな目標に掲げ、サステナブルファイナンスの推進を施策の中軸に据えると説明。施策の柱は、「Tokyo Green Finance Initiative(TGFI)の推進」「金融のデジタライゼーション」「多様な金融関連プレーヤーの集積」の3つであると述べました。

パネルディスカッション 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

「サステナブルファイナンスの推進に向けて」と題したパネルディスカッションでは、①「世界そして日本におけるサステナブルファイナンスの動向」、②「ESG金融をめぐる企業の情報開示とその評価に関する課題」、③「地方や中小企業等など幅広い分野でESGを促進するには」、④「ESG金融において東京がなすべきこと」などについて活発な議論が行われました。

オープニング

  • モデレーターの山岡氏が、「Tokyo Green Finance Market(仮称)」の実現に向けた検討委員会の委員長の立場から、東京のグリーンシティー化、およびサステナブルファイナンスの発展に向けた取組を紹介しました。
  • 同氏は、世界のESG金融の規模が現在35兆ドル、日本円で3900兆円相当の規模まで拡大し、今後も拡大が見込まれる一方、ESGの評価が主に海外の評価機関で行われ、評価のスタンダードが確立されておらず、機関により評価のばらつきも大きいという課題を指摘しました。そのうえで、「脱炭素」という世界的課題の解決に向け、地球にとって望ましい資源配分を自由経済のダイナミズムの中で実現していく上では、金融がそのリスク評価機能を発揮していくことが重要だと述べ、議論をスタートさせました。

テーマ① 世界そして日本におけるサステナブルファイナンスの動向

  • リフィニティブ・ジャパンの富田氏が、ロンドン証券取引所グループに属するリフィニティブ社が展開するESG投資に関する情報収集の在り方を紹介。業種と資金使途でサステナブルファイナンスの定義を明らかにした上で、データを収集している状況を説明しました。次いで三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高氏が、欧米を中心に世界のESG投資の現状について解説した上で、今後は「脱炭素」をキーワードとした投資行動に注目すべきだとの考えを明らかにしました。三井住友DSアセットマネジメントの猿田氏は、1989年に世界の株式市場で時価総額の40%を占めていた日本の株式のシェアが、2.5%まで落ち込んでいる現状を踏まえ、ESG投資におけるプレゼンス向上の前提として日本のマーケットを成長軌道に乗せることが大きな課題であることを指摘しました。

テーマ② ESG金融をめぐる企業の情報開示とその評価に関する課題

  • モデレーターの山岡氏が、ESG投資の情報開示と評価に関する問題を提起しました。これに対し、リフィニティブ・ジャパンの富田氏が、同社のESG情報の概要を説明し、特に企業が開示する情報の更新頻度を高める工夫が必要であることを述べました。三井住友DSアセットマネジメントの猿田氏は、適切なESG評価を実現するには非財務情報を定性的に評価、判断する必要があり、その手法を確立するには時間がかかることを指摘しました。

テーマ③ 地方や中小企業など幅広い分野でESGを促進するには

  • モデレーターの山岡氏が、ESG投資に中小企業も含めた幅広いプレーヤーの参加を促す必要性を指摘しました。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高氏は、ESG投資が地域の経済活性化の起爆剤になる可能性を示した上で、インベストメント・チェーンにいる企業を支援する間接金融の重要性を指摘しました。ただ、地方の金融機関などでは、どういった投融資がESGの分野に入るのかといった判断ができないこともあり得るとし、確実にESG分野である投融資先をリストアップすることが、情報開示の第一歩であるとの認識を示しました。

テーマ④ ESG投資において東京がなすべきこととは何か

  • モデレーターの山岡氏による、東京でESG投資を拡大するために必要なことは何かとの問いに対し、リフィニティブ・ジャパンの富田氏はCOP26の議長国としてESG投資の環境整備に積極的な役割を果たす英国のロンドン証券取引所グループとの協力関係強化の必要性を指摘しました。
  • 三井住友DSアセットマネジメントの猿田氏は、足元の成長がなければ将来の存続もありえないと言及し、そのためにわれわれ投資家は企業がコーポレートガバナンスの強化などこれまでの取組を継続し、経営改善と成長を間断なく続けるという意識を持って尽力するようコミットメントすることが重要であると語りました。
  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高氏は、東京は脱炭素に関する技術を有している企業が多く、そこに潜在的な可能性があると指摘しました。また、災害に対して強靭な都市であることも国際金融都市になるための重要なファクターであると語り、そうしたことも「国際金融都市・東京」構想の中でアピールしたほうがよいのではないかと述べました。

Q&A

  • 中小企業のESG投資を促進していく方法について問われた三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高氏が「上場企業との間で取引をすると、投資家からサプライチェーンの管理から中小企業のESG評価も行われる可能性があるので、中小企業向けに簡易なESG情報ガイドラインなどを作成していく必要がある」と回答しました。
  • また、「日本の認証基準とグローバルな認証基準との関係は」との質問には、三井住友DSアセットマネジメントの猿田氏が「各国の事情が異なるので、すべてグローバルな基準に合わせることは難しい」、リフィニティブ・ジャパンの富田氏は「標準的なテンプレートを作成し、それを各国の事情に合わせて調整して使うという形がある」と回答しました。
  • 「ESG投資の拡大が金融市場全体の発展につながるのか」との質問には、三井住友DSアセットマネジメントの猿田氏が「金融市場全体の発展の方が先に立つので、特に個人の金融資産をマーケットに引き込んでいく必要がある」と回答しました。

まとめ

  • モデレーターの山岡氏が議論を総括し、ESGの推進に向け、金融はその本源的機能であるリスク管理やプライシングを通じて適切な資源配分を実現する重要な役割を担っており、この面から情報開示とリスク評価、資金配分、プロジェクト評価という前向きの循環を促していくことが、脱炭素化の実現や都民の生活向上にもつながるだろうと締め括りました。

東京都 政策企画局 戦略事業部 戦略事業課