東京都では金融による社会的課題の解決に貢献していくため、サステナブルファイナンス推進に向けた多様な取組を積極的に行ってきました。この度、2021年2月8日から2月12日まで東京・サステナブル・ファイナンス・ウィークを開催しました。
東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク期間中には、一般都民の方を対象として、サステナブルファイナンスの基礎を学ぶための「都民向け金融セミナー」を開催しました。セミナーでは、有識者からの講演を通し、金融や投資の基本、および昨今急速に拡大しているサステナブルファイナンスについて、都民が取り組むための基礎知識や投資の実践方法等を解説しました。プログラムは2部構成となっており、前半でサステナブルファイナンスおよび投資の基礎知識について触れた後、後半で投資の実践にむけた各種方法のご紹介および解説を実施しました。
時間 | 項目 | セッションタイトル | 登壇者 |
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13:00~13:05 (5分) |
開会挨拶 | 東京都による開会の挨拶 | 東京都戦略政策情報推進本部 |
13:05~13:50 (45分) |
投資・サステナブルファイナンスの基礎知識 | サステナブルファイナンスの基礎知識 |
水口 剛 高崎経済大学/教授 |
13:50~14:45 (55分) |
投資と資産形成の基礎知識 | 竹川 美奈子 LIFE MAP 合同会社/代表 ファイナンシャルジャーナリスト |
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14:45~14:55 (10分) |
質疑応答 | ― | |
15:00~15:45 (45分) |
サステナブルファイナンスの実践 | サステナブル金融商品の種類、特徴 |
水口 剛 高崎経済大学/教授 |
15:45~16:30 (45分) |
企業の非財務情報開示の見方 |
阿部 和彦 PwCサステナビリティ合同会社 執行役員 |
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16:30~17:00 (30分) |
質疑応答 | ― |
高崎経済大学/教授
水口 剛
筑波大学卒業。博士(経営学:明治大学)。商社、監査法人等の勤務を経て、97年高崎経済大学経済学部講師。08年より教授。専門は責任投資(ESG投資)、非財務情報開示。環境省ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース座長、金融庁・GSG国内諮問委員会共催インパクト投資勉強会座長等を歴任。主な著書に『ESG投資-新しい資本主義のかたち』(日本経済新聞出版社)、『責任ある投資-資金の流れで未来を変える』(岩波書店)など。
LIFE MAP 合同会社/代表 ファイナンシャルジャーナリスト
竹川 美奈子
大学を卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立。2000年にFP(ファイナンシャルプランナー)資格を取得。取材・執筆活動を行うほか、投資信託やiDeCo(個人型確定拠出年金)、マネープランセミナーなどの講師を務める。「1億人の投信大賞」の選定委員、「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」という個人投資家の交流会の幹事を務めるなど、投資のすそ野を広げる活動にも取り組んでいる。2016年7月~金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ委員。『改訂版 一番やさしい! 一番くわしい! はじめての「投資信託」入門』(ダイヤモンド社)など著書多数。
PwCサステナビリティ合同会社/執行役員
阿部 和彦
公認会計士。PwCの東京、ニューヨーク事務所等で約20年にわたり会計監査やアドバイザリー業務を大手金融機関や大手企業に提供。2008年よりPwCあらた有限責任監査法人サステナビリティサービスチームに所属し、大手金融機関等に対してESG投資等のサステナブルファイナンスに係る支援業務を提供。事業会社に対して環境サステナビリティに係る支援業務を提供。環境省「環境コミュニケーション大賞」審査委員、サステナビリティ情報審査協会副会長、日本サステナブル投資フォーラム監事。『自然資本入門』(自然資本研究会)共著等。
高崎経済大学/教授 水口 剛 氏
水口教授の講演では、サステナブルファイナンスの定義から、サステナブルファイナンスが必要となる根本原因である「資本主義システムの限界が来ている」ことを馴染みやすい日常生活の事例で説明しました。
さらに、投資家がサステナブルファイナンスを実行する3つの思想「ESGは投資成果を改善する」、「ユニバーサル・オーナーシップの考え方」及び「個人投資家のサステナビリティ選好」をそれぞれ解説しました。
最後に、グローバルで推進しているEUタクソノミーなどのサステナブルファイナンスに関する動向、また日本における2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を紹介しました。
LIFEMAP合同会社/代表、ファイナンシャルジャーナリスト 竹川 美奈子 氏
竹川氏はファイナンシャルジャーナリストの視点から、個人資産形成の実践方法及び個人におけるサステナブルな金融商品の運用方法を中心に紹介しました。
個人の資産形成において、iDeCo、つみたてNISA制度などの仕組みを詳しく説明し、また個人でサステナブルな金融商品を運用する際の投資選択肢と参考すべき情報を紹介しました。
高崎経済大学/教授 水口 剛 氏
本講演では、金融機関と個人投資家それぞれ観点から、サステナブルファイナスの関与方法を中心に紹介しました。金融機関において、ファイナンスのそれぞれの領域(株式、債券、融資など)におけるESG投資の手法をそれぞれ説明しました。個人の立場では、ESGに強い金融機関・運用機関の識別方法、統合報告書やサステナビリティ報告書の基礎知識、ESGリテラシーを強化する方法などの実践的な方法を解説しました。
PwCサステナビリティ合同会社/執行役員 阿部 和彦 氏
本講演では、企業の非財務情報の開示に関連するサステナビリティレポートと統合報告書の作成基準や、内容の要素、またそれに加え、気候変動や人権など環境・社会のテーマを巡る各イニシアティブの特徴が紹介されました。さらに、企業のサステナビリティ取組みの評価として、サステナビリティ格付けの仕組みを説明したほか、具体的な事例も交えて非財務情報開示の見方を解説しました。
参加者からは、以下のような質問が挙げられました。
Q:リターン重視の投資家にとって、 ESG 投資の意義
A:外部的な不経済を削減して経済全体を底上げしていくこと、また、座礁資産の排除のように、 ESG を考慮することが結果的に投資のパフォーマンスを高 めるという側面もある。
Q:個人の資産形成の入門に参考となる情報源
A:入門 書籍、金融 広報中央委員会の「知るぽると」サイト、投資信託協会や日本証券業協会が発行する投資信託や税制度などに関するリーフレットなど。
Q:情報開示について:企業側の開示基準の統一についての現状と今後の方向性
A:非財務情報開示が主流化、メインストリーム化しており、また、サステナビリティ情報開示に関する各種スタンダード統合化の動きが見られている。